放射線防護に係わる国際機関等の活動と国内対応
― 現状と課題






平成14年7月

原子力安全委員会
放射線障害防止基本専門部会




    (頁)
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
第1章 放射線防護に係わる国際機関等に関する基礎調査について・・・・・・・・・・・・ 1
国際機関等に関する基礎調査の意義と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
基礎調査の対象とした国際的団体・機関・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
国際的団体・機関等に関する基礎調査項目・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
第2章 国際的団体 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
国際放射線防護委員会
(International Commission on Radiological Protection、ICRP) ・・・・・・・・・・・
3
国際放射線単位測定委員会(International Commission on
Radiation Units and Measurements, Inc.,ICRU)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3
第3章 国際機関 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
国際原子力機関 (International Atomic Energy Agency、IAEA)・・・・・・・・・・ 4
原子放射線の影響に関する国連科学委員会(United Nations Scientific
Committee on the Effects of Atomic Radiation、 UNSCEAR)・・・・・・・・・・・・・
5
経済協力開発機構/原子力機関(Organisation for Economic Co-operation
and Development/ Nuclear Energy Agency、 OECD/NEA)・・・・・・・・・・・・・・・
6
第4章 国内対応の現状と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
別紙1 放射線防護に係わる主要な国際機関等について (個別表)・・・・・・・・・・・・・・ 9
参考資料1 国際放射線防護委員会(ICRP)関連資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
参考資料2 国際放射線単位測定委員会(ICRU)関連資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23
参考資料3 国際原子力機関(IAEA)関連資料 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
参考資料4 原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)関連資料 ・・・・・・ 35
参考資料5 経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)関連資料 ・・・・・・・・・・・・・ 39


はじめに

放射線防護の基本的考え方や防護基準等は、従来から国際放射線防護委員会(ICRP)などの国際的団体や、国際連合、国際原子力機関(IAEA)などの国際機関において、検討が進められてきており、これらの組織により策定された勧告やガイドラインが、世界各国の放射線防護に係わる法令や技術的基準に採用されてきている。
 我が国においても、ICRP勧告をはじめとするこれらの国際的な基準や安全規制の考え方を尊重して、放射線・放射性同位元素の定義・取り扱い、防護基準等に関する法令や技術的基準等が定められてきている。原子力安全委員会の安全審査指針類(以下「指針類」と記す)における放射線防護に係わる記載事項も、ICRP勧告等やIAEA等による防護原則の考え方を参照して、定められている。
 現在、放射線は、医療、工業、農業等、様々な産業活動において利用されている。これらの活動は世界的規模の広がりを示すに至っており、放射線防護に係わる諸基準について国際的な整合性を図ることの重要性が一層高まってきている。このような状況を踏まえて、我が国は、今後とも国際的な検討に参画しつつ、その結果を適切に取り入れていくことが重要であると考えられる。
 本報告書では、放射線防護の基準の策定等に関与している主要な国際的団体・機関等の設置目的、組織・構成、活動等について調査・整理するとともに、我が国のこれらの活動への対応の現状を調査し、検討すべき課題を取りまとめた。


第1章 放射線防護に係わる国際機関等に関する基礎調査について
1. 国際機関等に関する基礎調査の意義と目的

 放射線防護の基本的考え方は、放射線利用の歴史とともに形成されてきた。特に医学利用の分野において、X線診断や放射線治療に際して、医療者や患者に放射線障害が起きないように対策を講じる必要があることが早くから認識され、1928年の国際放射線医学会総会(ICR)において、この課題に専門的に取り組む学術的組織として、国際X線ラジウム防護委員会(IXRP)が設立され、これが第二次世界大戦後(1950年)、国際放射線防護委員会(ICRP)に発展し、現在に至っている。このように、放射線防護の分野では、他の分野に先駆け、早くから中立的な学術団体により、放射線被ばくとその障害についての経験に学び、安全原則を確立することに努力が払われ、その活動が現在に至っていることは注目すべきことである。
 一方、第二次世界大戦後、米国及び旧ソ連などによる核実験の広がりに対する世界の国々の懸念を受けて、国際連合(UN)は、「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」を設置し(1955年)、核実験によるフォールアウト(放射性降灰)の環境汚染や放射線の健康影響に関する科学的な総合評価を行う活動を開始した。また国際連合の専門機関である国際原子力機関(IAEA、1957年設置)は、全世界の平和、健康及び繁栄のために、原子力の貢献を促進、増大し、IAEAにより、またはIAEAを通じて提供される援助が軍事目的に転用されないことを確保するための活動を開始した。このIAEAの活動において、原子力安全と放射線防護とは重要な部分を占めている。UNSCEARの活動は放射線防護の基礎となる環境及び人の健康への影響に関わる学術的情報を提供するものであり、またIAEAの放射線防護に関する活動は、ICRP勧告の実務的適用について、より具体的な指針を示すものである。これらの国際機関の歴史的な背景と役割、及び現在の活動について理解することは、放射線防護の枠組みの検討の基盤として必須である。 
 このため、本調査は、放射線防護に関係する主要な国際的団体・機関等の活動の内容と状況、及び我が国の対応の状況を明らかにし、今後の課題を摘出することを目的とした。

2. 基礎調査の対象とした国際的団体・機関
 放射線防護基準等の検討と策定に係わる活動を行っている国際的な組織のうち、我が国における放射線障害防止の基本的考え方や安全指針類の検討に当たってその全体像の把握が必要なものを中心に、調査・検討を行った。対象としたものを以下に示す。

(1)  国際的団体
  1) 国際放射線防護委員会 (ICRP)
  2) 国際放射線単位測定委員会(ICRU)
(2)  国際機関
  1) 国際原子力機関(IAEA):
   安全基準委員会(CSS)、原子力安全基準委員会(NUSSC)、放射線安全基準委員会(RASSC)、廃棄物安全基準委員会(WASSC)、輸送安全基準委員会(TRANSSC)、国際原子力安全諮問グループ(INSAG)
  2) 国際連合(UN)
   原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)
  3) 経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)
   放射線防護・公衆衛生委員会(CRPPH)、その他

 なお、世界保健機関(World Health Organization、WHO)、国際労働機関(International Labor Organization、ILO)、国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization、FAO)等の組織も、放射線防護に関連した重要な活動を行っているが、これらについては今後、必要が生じた時点で調査・検討することとした。

3.国際的団体・機関等に関する基礎調査項目
 国際的団体・機関に関して、以下の項目について調査した(別紙1)。

(1) 国際的団体
  名称(英文、和文)、設立年、設立経緯、事務局、組織・構成、設置目的、運営方針、関連団体等、オブザーバー、開催状況、公開情報、資料入手先、連絡先、我が国の対応状況(法令・規制への取り入れ、経緯、実績等)
(2)国際機関
  名称(英文、和文)、設立年、設立経緯、事務局、加盟国、オブザーバー、開催状況、公開情報、資料入手先、連絡先、我が国の対応状況(主務窓口、関連府省庁、代表、国内検討委員会等、法令・規制への取り入れ、経緯、実績等)


第2章 国際的団体
 ICRPとICRUの活動は、放射線防護分野で特に重要な位置を占めている。これらは専門家としての個人に立脚した団体であるが、70年を超える長期の活動の実績と、その勧告の中立性等の理由により、世界各国での放射線防護基準の基礎となっている。
 ICRPとICRUは、国際機関とは異なり、NGO(非政府組織)であって、その委員は国家、団体、信条、その他何らかの組織の代表として指名されるのではなく、その人個人の科学的資質、学識、能力に基づいて選任される。

1.国際放射線防護委員会 (International Commission on Radiological Protection、ICRP)
 ICRPは、1928年の第2回国際放射線医学会総会(International Congress of Radiology、ICR)において、国際X線ラジウム防護委員会(IXRP)という名称で設立された組織であり、1950年にICRPと改称されて現在に至っている。ICRPの目的は、公衆の利益のために科学としての放射線防護を推進し、放射線防護に関する勧告と指針を提供することである。
 ICRPは、放射線影響に関する科学的データや、放射線利用の分野・形態、放射線防護・安全に関する技術的水準等を考慮して、放射線防護の理念や概念に関する基本的考え方、線量限度等の基準値を含めた規制の考え方等を検討し、その結果を委員会勧告、あるいは委員会報告書として、ICRP刊行物( ICRP Publication)の形で公表している。これらの勧告や報告書は、放射線防護の専門家や各国の規制当局に読まれることを意図しており、世界各国の放射線安全基準を作成するための基礎として取り扱われている。我が国も、国際的に整合性のある安全基準が必要であるという認識のもとに、放射線関連法令についてはICRP勧告を尊重する立場を取っている。
 ICRPは、主委員会と常設の四つの専門委員会とで構成されており、必要に応じそれぞれの委員会のもとにタスクグループを組織し、放射線に係わる様々な課題に対して幅広く対応する体制となっている。これらの専門委員会はそれぞれ、第1専門委員会が「放射線影響」、第2専門委員会が「放射線被ばくによる線量」、第3専門委員会が「医療における防護」、第4専門委員会が「委員会勧告の適用」、を検討課題としている(別紙1、参考資料1)。

2. 国際放射線単位測定委員会 (International Commission on Radiation Units and Measurements, Inc.、ICRU)
 ICRUは、1925年の第1回国際放射線医学会総会(ICR)において国際X線単位委員会(IXUC)として設立された。設立当初の目的は、がんの放射線治療法を開発するために放射線の単位を定めることであった。近年においては広く、医学、産業、宇宙環境分野に対応し、これらの分野における放射線測定、被ばく量評価、SI単位への導入等の問題に取り組んでいる。ICRUは、主委員会と、報告書作成の作業に当たる約20の報告書委員会とで構成されており、放射線防護の諸基準の勧告策定に際してICRPとも連携を図っている。現在のICRU活動の主たる目的は、(1)放射線及び放射能の量と単位、(2)放射線診断、放射線治療、放射線生物学、及び産業活動におけるこれらの「量」の測定と利用に適した手順、(3)これらの手順を用いるに際して必要となる物理的データ、に関して勧告を策定することである。ICRUからは、課題毎の報告書及び定期刊行物がICRU報告書(ICRU Report)として刊行され、国際機関、各国政府、学界、及び産業界における放射線・放射能測定の基準、ガイド等に取り入れられている(別紙1、参考資料2)。


第3章 国際機関
 国際機関として活動しているもののうち、IAEAとUNSCEARは国連の機関であり(IAEAは国連の専門機関、UNSCEARは国連総会直属の組織)、その設立経緯や活動内容を反映して、多くの国が参加している。特に、IAEAにおいては、原子力の平和利用の推進とその安全確保の観点から、多くの国が参加し、広範な活動が行われている。 近年、IAEAの原子力安全に関連した活動の一つとして「安全基準文書の体系化」が試みられており、これは安全原則を頂点とする階層化された基準文書の整備を目指すもので、注目すべき活動である。
 他方、UNSCEARにおいては、放射線の環境・健康影響に関して、詳細な科学的データを付した総括的報告書の作成作業が続けられて来ている。その検討課題は、自然放射線からの被ばく、核燃料サイクルの環境影響、核実験による影響、医療被ばく、遺伝的影響、生物学的影響等に及んでいる。これらの報告書は国連総会における検討を始めとして、ICRPやIAEA等の議論においても基礎データとして広く利用されている。
 これらと比較すると、OECD/NEAは、国際機関であるが、欧米の先進国を中心とした加盟国によって構成されており、その活動も国際基準を策定するというよりは、加盟国間の情報交換の推進、あるいは関連機関、委員会等に関連する基準の解釈や理解の促進、国際的な協調活動の推進、最新の科学的な知見のレビュー等が中心となっている。

1.国際原子力機関(International Atomic Energy Agency、IAEA)
 IAEAは1953年の国際連合第8回総会において米国大統領により提唱され、1956年にIAEA憲章が採択された。同年、日本を含む70ヶ国が調印し、1957年にIAEA憲章が発効した。現在の加盟国は134ヶ国である。IAEAの目的は、IAEA憲章の第2条において、「(1)全世界の平和、健康及び繁栄のため、原子力の貢献を促進、増大する。(2)IAEAにより、またはIAEAを通じて提供された援助が軍事目的に転用されないことを確保する。」と規定されている。IAEAの現在の主な活動は、原子力の平和利用の促進に係わる(1)技術援助、(2)科学者,技術者の交換及び訓練、(3)核物質等が軍事目的に利用されないための保障措置の実施、(4)情報交換の促進、(5)基準,協定,規定の作成、(6)研究活動の推進、(7)国際原子力情報システム(International Nuclear Information System、INIS)の整備・運営、等である。
 上記(5)項の活動の中で、原子力安全と放射線防護に係わる重要な活動として、安全基準文書(Safety Series)の策定がある。安全基準文書は、原子力利用に係わる様々な分野における「安全の基準(Safety Standard)」について、国際的に統一された考え方を示そうとするものである。1996年にIAEAは、いくつかの分野ごとに策定作業が行われている安全基準文書の間での一貫性と整合性を図るという観点から、文書策定過程を統一するとともに、委員会体制を再編成し、国際原子力安全諮問グループ(INSAG)と5つの基準委員会、即ち、安全基準委員会(CSS)、原子力安全基準委員会(NUSSC)、放射線安全基準委員会(RASSC)、廃棄物安全基準委員会(WASSC)、及び、輸送安全基準委員会(TRANSSC)を設けて、それぞれの役割を定めた。現在、安全基準文書は、原子力安全、放射線安全、廃棄物安全、輸送安全、及び一般安全(全分野に共通する事項と各分野にまたがる事項:行政及び法令上の基盤、緊急時対応、品質保証等を含む)の五つの分野について準備され、あるいは検討が進められている。放射線防護に関するものは放射線安全基準委員会(RASSC)が担当しており、重要な安全基準文書として、「電離放射線に対する防護と放射線源の安全のための国際基本安全基準International Basic Safety Standards for Protection against Ionizing Radiation and for Safety of Radiation Sources(i996). Safety Series 115」 等がある。なお、これらの安全基準文書は、国際基準文書として国際的な合意を得た文書とすることになっているが、加盟国を法的に拘束するものではなく、それぞれの加盟国の活動に応じて、それぞれの裁量で選択して使用できるものとされている(別紙1、参考資料3)。
 IAEAの放射線防護に係わるその他の重要な機能として、「原子力事故の早期通報に関する条約」、及び「原子力事故又は放射線緊急事態の場合における援助に関する条約」に関する事務局としての活動がある。また、IAEAはOECD/NEAと共同して「国際原子力事象評価尺度(INES, International Nuclear Event Scale)の運用に当たっている。INESは原子力施設等で発生した事故・トラブルなどについて、その安全上の重要性を速やかに、分かり易い形で公衆に知らせる手段である。1992年から運用されており、我が国を含めて60ケ国が参加している(参考資料3)。この他に、アジア・太平洋地域の国々(17ヶ国)が参加している地域協力協定(IAEA/RCA, Regional Cooperative Agreement)のプログラムの中でも、放射線防護に関するインフラの整備、教育訓練、共同研究などが活発に行われている。 

2.原子放射線の影響に関する国連科学委員会(United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation、 UNSCEAR)
 UNSCEARは、1955年第10回国連総会決議に基づいて設置された国連総会直属の委員会である。放射性物質の環境及び人の健康への影響に関する学術データを収集・蓄積し、国連加盟国に対して報告書の形で提供することを目的に、英、米、スウェーデン、日本等、21ヶ国が参加している。
 UNSCEARは、1960年代までは核実験フォールアウトからの線量評価に重点を置いていたが、その後、大気圏内の核実験が縮小されるのに伴い、原子力の平和利用に付随する諸問題に対象が拡大され、環境放射線線量の総合的評価、並びに原爆被爆者の疫学調査や生物学的研究成果による放射線の人体への影響の評価等、放射線による環境・健康影響についての科学的成果の評価に主眼を置くようになってきた。
 UNSCEARでは、国連加盟国等から提供される「あらゆる電離放射線源からの被ばくがヒトの健康と環境に及ぼす影響についての資料」を受理、収集整理し、利用しやすい形にまとめており、その報告書は、国連加盟各国における放射線防護・安全に関する様々な検討の基盤データベースとなっている。また、ICRP勧告等においても、基礎データとして活用されている(別紙1、参考資料4)。

3. 経済協力開発機構/原子力機関(Organisation for Economic Co-operation and Development/ Nuclear Energy Agency、 OECD/NEA)
 経済協力開発機構(OECD)の前身である欧州経済共同体(OEEC)は、第二次世界大戦後の欧州の経済復興と原子力平和利用の促進のために、1958年に欧州原子力機関(European Nuclear Energy Agency、ENEA)を創設した。その後、加盟国の増加や欧州を越えた枠組みの拡大に伴い、1972年には、名称を原子力機関(NEA)に改めた。日本は、1972年に加盟した。2002年7月現在、加盟国は28ヶ国である。これらの国々の原子力発電所の総出力規模(kWベース)の総計は、世界全体の83%(2001年末)を占めている。
 OECD/NEAの目的は、国際協力を通じて、加盟国が安全で環境にやさしく、かつ経済的な原子力エネルギーの平和利用に必要な科学的、技術的、制度的な基盤を維持・発展させるのを支援することである。この目的を達成するために、七つの常設委員会が設置されている。
 放射線防護に関する委員会としては、放射線防護・公衆衛生委員会(Committee on Radiation Protection and Public Health、 CRPPH)がある。その活動として、加盟国の経験や情報を交換し、共通の課題についての検討を行い報告書に取りまとめている。これらの報告書の取り扱いは各国にゆだねられる性格のものであり、各国の規制に適宜反映されるものもあるが、特に拘束力を持つものではない(別紙1、参考資料5)。


第4章 国内対応の現状と課題
 ICRPとICRUの構成委員は、専門家としての個人の資格で選任されて活動しており、国や何らかの組織、あるいは所属機関を代表する者ではないので、その勧告や報告書の作成過程やその内容に国が直接関与することはない。しかしながら、検討の結果として公表される勧告や報告書の内容によっては、国としての対応が必要となる場合があることから、これら委員会の活動の動向を絶えず把握していることが必要である。そのためには、それらの委員会のメンバーや関係する専門家との意見交換と情報収集が重要となる。
 一方、IAEA、UNSCEAR、OECD/NEAなどの国際機関に関しては、我が国は、国としてこれらの機関の活動に積極的に参画してきている。これらの国際機関で検討された基準や基本的考え方は、その内容に応じて、国内法令に取り入れられたり、あるいは、その放射線防護の考え方が原子力安全に係る指針類に反映されている。
 我が国では、国際機関の活動に対しては外務省ならびに関係行政庁を窓口として、担当の行政官や関係する研究機関の専門家が会議に参加するなどの対応がなされており、必要に応じて、その対応を検討するための国内検討委員会が設けられている。しかしながら、我が国の国際的活動は十分に体系的な組織体制の下で対応されているとは言えず、また、必要な情報が必ずしも関係者の間で共有されているとは言えない。
 放射線防護に係わる主要な国際的団体と機関に対する我が国の対応について別紙1に、取りまとめた。これらの対応状況は様々であり、例えば、IAEAの安全基準文書に係わる五つの基準委員会のうち、原子力安全基準委員会(NUSSC)、廃棄物安全基準委員会(WASSC)、輸送安全基準委員会(TRANSSC)については国内検討委員会が設置され、活動しているが、安全基準委員会(CSS)及び放射線安全基準委員会(RASSC)については設置されていない。
 また、情報の入手とその活用に関しては、原子力安全や放射線防護分野における国際的な団体・機関から公表される文書のうち、ICRP勧告などのICRP出版物については、翻訳検討委員会が設けられ(日本アイソトープ協会)、主要なものを翻訳、出版して関係者の使用の便に供しているが、ICRU報告書に関してはそのような方式による体系的な翻訳、出版は行われていない。IAEA安全基準文書等についても翻訳、出版はなく、原子力安全と放射線防護に関する重要な情報を的確に伝達、普及させるという点で不十分な状況となっている。これらの国際機関等の活動や文書についての情報は、放射線防護に係わる業務の担当者や、国際会議等の場における検討に参加する行政官、専門家などの直接的な関係者のみならず、安全問題に関わるより広い範囲の人々にとっても有用なものであるので、それらの情報を活用するためには情報を体系的に整理し、共有化するシステムを整備することが望まれる。
 これらの状況を踏まえ、我が国の国際的活動が円滑に、効果的に行われるよう、国際的な放射線防護に関する活動全体を把握し、的確かつ総合的に対応する体制の整備が強く望まれる。
 なお、以上で取り上げた以外の国際機関として、世界保健機関(WHO)、国際労働機関(ILO)、国連食糧農業機関(FAO)等が放射線防護に関連した重要な活動を行っている。例えば、WHOは、放射線・放射性物質の医学利用とそれに係る放射線防護、放射線緊急事故医学的対応・救援ネットワーク(Radiation Emergency Medical Preparedness And Assistance Network、REMPAN)を通じての被ばく医療、チェルノブイリ事故の健康影響調査など、ILOは、「電離放射線からの労働者の防護に関する条約及び勧告」や作業者の放射線防護に係わる手引き等の策定、FAOは、IAEAあるいはWHOとの共同作業(IAEA・FAO共同部門、FAO・WHO合同食品規格委員会)により、農畜産業における放射線利用と食品の安全性の検討と規格やガイドラインの制定等、を行っている。これらの国際機関については、今後、放射線障害防止の基本的考え方の審議や指針類の検討等に際して適宜対応することが出来るように、日頃から関連情報の収集・把握に努める必要がある。


おわりに
 本報告書においては、放射線防護に関連する主要な国際的団体・機関について、それらの設立の趣旨、活動内容、情報の入手法、我が国の窓口、法令との関連等を含む基礎調査項目を定めて現状を調査し、その結果をまとめて考察した。この基礎調査の対象とした国際的団体・機関は、国際放射線防護委員会(ICRP)と国際放射線単位測定委員会(ICRU)、ならびに、国際原子力機関(IAEA)、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)、である。
 これらの国際的な組織は、それぞれがその設立と運営の歴史的経緯を踏まえて、放射線防護における重要な役割を果たしている。我が国はこれらの組織に対して、その特質を正確に把握し適切に対応していくことが重要である。IAEA、UNSCEAR、及びOECD/NEAはそこでの審議・検討の過程と成果の利用との両面において、国としての直接的な対応が求められている機関である。他方、ICRPやICRUは検討の過程に対しては専門家としての個人が対応し、成果の利用に関しては国としての対応が必要となる国際的団体である。いずれの国際的な組織も、我が国の放射線防護の基礎を形作り、発展させていくのに際して重要な役割を果たしており、それぞれの特質に配慮した考察と検討が必要である。
 当然のことではあるが、これらの国際的な組織における活動に対して、我が国として、あるいは個々の専門家としての積極的な貢献が期待されている。このために、国内における適切な検討体制の確立(政府内の検討体制、学会・協会での検討体制等)、関係省庁間の連絡・協力体制の強化、等に新たな工夫が必要となる。現在のように、国際化(グローバリゼーション)が強調される時代においては、とりわけ国際動向に対する配慮と協調が必要である。原子力安全委員会においても、国際的な放射線防護に関する活動を把握し、より総合的な対応をすることが重要である。
 ICRPは約4年後に新しい基本勧告を出すことを予定しており、この新勧告に向けて現在各国の放射線防護の専門家が検討を進めている。我が国においても、放射線防護に係わる基本的事項についての情報収集に努め、活発な議論を進めその結果を取りまとめて、新しい勧告に対して時機を逸することなく適切に対応する準備を進めることが重要である。


別紙 1

放射線防護に係わる主要な国際機関等について(個別表)


1 国際的団体  
1-1 国際放射線防護委員会(ICRP)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
1-2 国際放射線単位測定委員会(ICRU)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
2 国際機関  
2-1 国際原子力機関(IAEA)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
2-1-1 安全基準委員会 (CSS)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
2-1-2 原子力安全基準委員会 (NUSSC)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
2-1-3 放射線安全基準委員会 (RASSC)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 15
2-1-4 廃棄物安全基準委員会 (WASSC)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
2-1-5 輸送安全基準委員会 (TRANSSC)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
2-1-6 国際原子力安全諮問グループ (INSAG)・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
2-2 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 (UNSCEAR)・・・ 19
2-3 経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)
放射線防護・公衆衛生委員会(CRPPH)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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参考資料 1

国際放射線防護委員会(ICRP)関連資料


 ICRPの活動の結果はICRP出版物として刊行される。刊行物は、放射線防護の基本的考え方を示す基本勧告と、主として各専門委員会から提出される報告書とに大別される。現在、これらはICRP紀要(Annals of ICRP)として出版されている。

1.基本勧告
 基本勧告は放射線防護の基本原則を示すものであり、これまでに5回刊行されている。放射線防護体系は、Publication 26 (1977)において線量制限体系としての骨格が示され、Publication 60 (1990)においてそれが発展整備されて現在の形となっている。
  (1) Publication 1 国際放射線防護委員会勧告 (1958年9月採択)
  (2) Publication 6 国際放射線防護委員会勧告 (1959年修正、1962年改訂)
  (3) Publication 9 国際放射線防護委員会勧告 (1965年9月17日採択)
  (4) Publication 26 国際放射線防護委員会勧告 (1977年1月17日採択)
  (5) Publication 60 国際放射線防護委員会の1990年勧告 (1990年)
 最新の勧告である1990年勧告は国内法令や原子力安全委員会安全審査指針類に取り入れられている。現在、ICRPは2004年に公刊することを目途として新しい基本勧告の検討を進めている。


2. 専門委員会報告書
 勧告についての詳細な内容、具体的な適用例、勧告の基となったデータなどについて、専門委員会及びその中に設けられたタスクグループがそれぞれの課題毎に検討しまとめており、それが出版物として刊行されている。下表に、ICRP Publication 60以降に刊行された出版物を、専門委員会ごとに分類して示す。




参考資料 2

国際放射線単位測定委員会(ICRU)関連資料


過去約10年間(1998〜2001年)に公刊された報告書の一覧を示す。タイトルには簡略な和訳を附した。2001年以降の報告書は「Journal of the ICRU」として出版されている。 
 報告書No.51 放射線防護線量測定における量と単位(Quantities and Units in Radiation Protection Dosimetry ( 1993 )は 放射線線量測定において、特に重要な基本的な勧告である。



参考資料 3

国際原子力機関(IAEA)関連資料
1.国際原子力機関(IAEA)の組織

2.IAEAの安全基準体系に関する組織
 (1) IAEAの安全基準体系に関する組織図
 IAEA原子力安全局は、安全基準の策定を行っており、下に示すような委員会組織により作業を進めている。
安全基準に関する五つの委員会と国際安全諮問グループについて(2)〜(5)に示す。

 (2) 安全基準委員会(Commission for Safety Standards、 CSS)
 IAEAにおける国際安全基準文書の策定については、分野間の整合性をとること、及び国際合意を得た文書とすることを目指して、1996年に安全基準文書体系の枠組みが変更されたが、その際に、各分野の親委員会としてCSSが設置された。CSSの会合の役割は、各分野において新たな安全基準文書の策定を開始する際に最初の段階で作成するドラフト骨子(DPP:Document Preparation Profiles)を審査し承認(endorse)すること、そのドラフトの最終案を審査し、IAEA事務局長に助言を行うことである。CSSは、加盟国の原子力、放射線、廃棄物、輸送の安全に関する基準その他規制文書を策定する責任を担う上級政府職員で構成する委員会であり、我が国からは、原子力安全委員がCSS委員として参加している。

 (3) 原子力安全基準委員会(Nuclear Safety Standards Committee、 NUSSC)
 IAEA安全基準文書の分野の中では最も多くの文書が、原子力施設分野に充てられている。当初は、原子炉を対象とするものであったが、現在は範囲を広げて原子力施設を対象としている。扱う項目は、当初から設定されている設計、運転、立地評価、品質保証に加えて、新たに研究炉と核燃料サイクルが追加されている(図2-1、2-2)。
 NUSSCは、原子力安全に関する専門的見識を有する上級政府職員で構成される委員会で、我が国からは、経済産業省原子力安全・保安院が委員を派遣するとともに必要に応じ改定作業等に専門家を派遣し当該活動に貢献している。

 (4) 放射線安全基準委員会(Radiation Safety Standards Committee、 RASSC)
 IAEAの放射線分野の国際安全基準としては、BSS(Basic Safety Standards)の名称で古くから我が国でも馴染みのあるものであるが、その基礎とされているのはICRPの考え方である。したがって、ICRPの考え方に変更がある場合にはそれに応じて修正が必要となる。放射線に関する事項は、原子力施設や放射性廃棄物の分野でも関わりが多く、分野間の調整が重要とされ、RASSCはWASSCとの合同会合を開催する等の試みが行われている。特に最近の注目事項は、ICRPにおける検討とも深く関係するクリアランスレベルの考え方、NORM/TENORM (Naturally Occurring Radioactive Material / Technically Enhanced Naturally Occurring Radioactive Material)の扱い、環境への放射性物質の放出、放射性物質を含む輸出入品の取り扱い等、放射線分野に関わるものが多い。また、最新のBSS(参考資料1 3 図2-3)は、現在の体制が組まれた1996年に策定されているため、新しいIAEA文書体系に適合するように策定されてはおらず、一部に現在の文書体系に組み込むように改定を望む声がある。
 RASSCは、放射線防護に関する専門的見識を有する上級政府職員で構成される委員会で、我が国からは文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室が委員を派遣するとともに、必要に応じ改定作業等に専門家を派遣し当該活動に貢献している。

 (5) 廃棄物安全基準委員会(Waste Safety Standards Committee、 WASSC)
 放射性廃棄物の分野においても種々の安全基準文書の策定が行われていたが、次第に文書数が増え、項目としても複雑であるため、NUSS文書の体系に倣って、環境、放出、処分前、低レベル放射性廃棄物と高レベル放射性廃棄物の処分、デコミッショニングといった項目分けをして、体系化された一連の文書策定を目指して、1991年にRADWASS(Radioactive Waste Safety Standards)文書の策定が開始された。現在は、ICRPの考え方に合わせるようにして取り扱い項目の変更を行い、1996年以降の全体体系の中に組み込まれている(参考資料1 3 図2-1、2-3)。
 WASSCは、放射性廃棄物に関する専門的見識を有する上級政府職員で構成される委員会で、我が国からは経済産業省原子力安全・保安院が委員を派遣するとともに、必要に応じ改定作業等に専門家を派遣し当該活動に貢献している。

 (6) 輸送安全基準委員会(Transport Safety Standards Committee、 TRANSSC)
 輸送安全の分野は、国際間の物質移動が直接的に法律により規制される性格を持つものであることから、その取り扱いは、国内規制法令を含む全体的体系の中で検討されている。IAEAは、放射性物質に係る安全基準文書を定め、その改定作業も進めている(参考資料1 3 図2-1、2-3)。我が国においては平成12年3月に、原子力安全委員会においてIAEAの1996年版輸送規則(ST-1)の委員会決定が行われ、それを踏まえた国内の関係規則への取り入れが行われ、平成13年7月1日に施行された。
 TRANSSCは、放射性物質の輸送に関する専門的見識を有する上級政府職員で構成される委員会で、我が国からは経済産業省原子力安全・保安院が委員を派遣するとともに、必要に応じ改定作業等に専門家を派遣し当該活動に貢献している。

 (7) 国際原子力安全諮問グループ(International Nuclear Safety Advisory Group<、INSAG)
 INSAGは、1985年3月にIAEAの事務局長(Director General)の諮問機関として設置された、各国の学識経験者からなる集まりであり、IAEAの安全基準文書体系とは一線を画すものである。任期は3年で、IAEA事務局長が任命することとなっている。専門家が時宜に応じた重要なテーマについて検討し、INSAGレポートとして関係者の参考のための文書を発行している。我が国からもINSAG発足当初から専門家が参加している。
 原子力全般に係る活動をしており、1986年のチェルノブイリ事故に関する報告書(INSAG-1)、1988年のセーフティ・カルチャについての報告書(INSAG-4)、1996年の深層防護についての報告書(INSAG-10)、1999年の「放射線源の安全管理:原則及び戦略(The Safe Management of Sources of Radiation : Principles and Strategies) INSAG-11」の報告書等を作成している。

3.IAEA安全基準策定手順
手順 @ 文書作成概要書(DPP)の作成
 各文書のドラフト作成に先立ち、先ず、その文書の背景、適用範囲、目的、策定スケジュール等を記載した文書作成概要書であるDPP(Document Preparation Profile)を作成する。このDPPは、四つの安全分野に共通した一定の様式で策定し、各諮問委員会において承認された後、更にCSSの承認を得る。
手順 A ドラフトの素案作り
 承認されたDPPに基づき、IAEA担当スタッフ及び数人の専門家によるコンサルタント会合(CM : Consultant Meeting)を開催してドラフトを作成する。時によっては、加盟国からの専門家により構成される技術委員会(TCM : Technical Committee Meeting) 等が開催されることもある。
 註:こうした会合には、加盟国ルートでもなくまた登録メンバーにも相談なく、IAEA担当スタッフが任意に専門家を召集するため、注意が必要。
手順 B ドラフトの分野別委員会への上程
 CMで策定されたドラフトはNUSSC等各分野別の委員会に上程される。
 NUSSC等において承認されると、加盟国に対し外交ルートを通じて正式にドラフトの検討が依頼される。しかし、NUSSC等における検討により修正が必要とされた場合は差し戻しとなり、CMにおいて見直し、修正が行われることとなる。
手順 C 加盟国による検討及び各委員会によるドラフトの再検討
 加盟国は自国の法律・基準の現状を考慮してドラフトの検討を行い、必要なコメントを提出する。
 各加盟国から寄せられたコメントに基づきIAEA事務局が修正したドラフトは、再度NUSSC等において検討される。検討の結果、NUSSC等において承認されれば、CSSに上程されることとなる。
手順D CSSによるドラフト検討及びIAEA理事会による承認
 NUSSC等により承認された最終ドラフトは、CSSにおいて検討が行われる。
 検討の結果、出版することが承認されると、IAEA内の出版委員会においてレイアウト、字句、文法等編集上のチェックが行われる。
 CSSの承認を得た文書の中で、上位文書である安全原則と安全要件はIAEA理事会の承認を、また、安全指針はIAEA事務局長の承認を得て出版される。

4.IAEA安全基準体系の全体構成と安全基準文書
 IAEA安全基準全体体系、IAEA NUSSC文書体系詳細、及び、IAEA WASSC、RASSC、TRANSSC文書体系詳細((財)原子力発電技術機構のまとめによる)を図2−1 〜 2−3に示す。これらの表に記載されている基準文書にはその標題の前に分類番号が付されている。それらの分類番号の意味は以下の通りである。





4.IAEA INSAGの報告書等
 国際原子力安全諮問グループ(The International Nuclear Safety Advisory Group, INSAG)は、原子力、放射線、及び放射性廃棄物の安全について、世界的な見地からIAEA事務局長に助言する諮問グループである。 INSAGによる審議結果はIAEA事務局長に提出されるが、公刊の勧告を付けられて提出されたものは事務局長の判断により、INSAG Report(「INSAG Series No.**」のコード付)、またはINSAG Note (「INSAG Note No. **」のコード付)として、各国政府の原子力安全に係わる科学、技術及び規制機関向けに公刊される。 前者は比較的大部の内容のものである。後者は比較的短い内容のもので、早い公表を目的とするものである。

5.国際原子力事象評価尺度(INES)
 IAEA及びOECD/NEAでは、平成元年以来、原子力施設の事故・故障に係る国際的な評価尺度(INES : International Nuclear Event Scale)を策定し、1990年からの試験運用を終了、1992年3月に正式運用を開始した。下図に示すように、INESの評価基準は原子力施設における事象をレベル0からレベル7までの8段階に区別しており、これらは、尺度以下(Deviation)、異常な事象(Incident)、事故(Accident)の三つに大別される。国際機関における合意に基づき、評価レベル2以上の事象等については、速やかにIAEAに報告され、それが加盟国に報告されることになっている。我が国では発電用原子炉については、事故トラブル発生後に経済産業省原子力安全・保安院により暫定評価が行われ、その後、同省総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会に設置されたINES評価小委員会によって、事故後の原因究明が行われ再発防止対策が確定した後に正式評価が行われる。試験研究炉及びその他の施設については、文部科学省の委託により(財)原子力安全技術センターに設置された原子力施設事故・故障影響度評価委員会により、暫定・正式評価が行われ、文部科学省に報告される。これらの評価結果は原子力安全・保安院、及び文部科学省より原子力安全委員会に報告されると共に、それぞれIAEAに通報される。


参考資料 4

原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)関連資料

第10回国連総会決議(913X)(1955年12月3日付) 要旨
 決議では、@人体とその環境とに対する電離放射線の影響に関する問題の重要性とそれに関する一般的の関心が高まっていること、A短期、長期の影響に関し、放射線レベルならびに放射性降下物をも含めてすべての科学的資料を最も広く周知せしめるべきであること、Bこれら問題の研究が各国で行われており、世界の人々がこの問題についてさらに充分に知らさるべき、との信念に基づき、加盟15カ国(現在は21カ国)からなる科学委員会を設置し、かつこれらの政府に対し、この委員会において自国を代表する科学者1名を適当数の代表代理及び顧問等とともに、それぞれ指名するよう要請することになった。
 *なお、本決議について、UNSCEAR第50回会合(2001年4月)において改めて、その決議についてその確認がなされている。

2.UNSCEARの報告書
(1)UNSCEAR 1977 Report to the General Assembly, with Annexes, “Source and Effects of Ionizing Radiation”
 「放射線の線源と影響」原子放射線の影響に関する国連科学委員会の1977年報告書
付属書

  1. ヒト被曝評価に関する概念と量
  2. 自然放射線源
  3. 核爆発による放射能汚染
  4. 原子力発電による放射能汚染
  5. 職業被曝による線量
  6. 医療被曝
  7. ヒトにおける放射線発癌
  8. 放射線の遺伝的影響
  9. 実験放射線発癌
  10. 子宮内被曝による発達への影響

(2)UNSCEAR 1982 Report to the General Assembly, with Annexes, “Ionizing Radiation: Source and Biological Effects”
 「放射線の線源と影響」原子放射線の影響に関する国連科学委員会の1982年報告書 
付属書

  1. 線量評価モデル
  2. 自然の放射線源に対する被曝
  3. 技術的な進歩によって変った自然放射線被曝
  4. ラドン・トロンとそれら壊変生成物による被曝
  5. 核爆発による被曝
  6. 原子力発電に起因する被曝
  7. 医療被曝
  8. 職業被曝
  9. 放射線の遺伝的影響
  10. 照射の非確率的影響
  11. 放射線誘発の寿命短縮
  12. 放射線が物理的、化学的、生物学的作用因子と複合した場合の生物学的効果

(3)UNSCEAR 1986 Report to the General Assembly, with Annexes, “Genetic and Somatic Effects of Ionizing Radiation”
 「放射線の遺伝的影響と身体的影響」原子放射線の影響に関する国連科学委員会の1986年報告書
付属書

  1. 放射線の遺伝性影響
  2. 放射線誘発がんの線量効果関係
  3. 出生前照射の生物影響

(4)UNSCEAR 1988 Report to the General Assembly, with Annexes, “Sources, Effects and Risks of Ionizing Radiation”
 「放射線の線源、影響及びリスク」原子放射線の影響に関する国連科学委員会の1988年報告書
付属書

  1. 自然放射線源からの被曝
  2. 原子力発電からの被曝
  3. 放射線の医学利用による被曝
  4. チェルノブイリ事故からの被曝
  5. 遺伝的障害
  6. ヒトにおける放射線発癌
  7. 高線量放射線によるヒトの早期効果
      補遺:チェルノブイリ原子力発電所事故犠牲者における急性放射線効果

(5)UNSCEAR 1993 Report to the General Assembly, with Annexes, “Sources and Effects of Ionizing Radiation”
 「放射線の線源と影響」原子放射線の影響に関する国連科学委員会の1993年報告書 
付属書

  1. 自然放射線源からの被曝
  2. 人工放射線による被曝
  3. 医療被曝
  4. 職業上の放射線被曝 
  5. 放射線発がんの機構
  6. 放射線の確率的影響に及ぼす線量および線量率の影響
  7. 放射線の遺伝的影響
  8. 発生中のヒトの脳への放射線の影響
  9. 小児における晩発性確定的影響

(6)UNSCEAR 1994 Report to the General Assembly, with Annexes, “Sources and Effects of Ionizing Radiation”
 「放射線の線源と影響」原子放射線の影響に関する国連科学委員会の1994年報告書 
付属書

  1. 放射線発癌の疫学的研究
  2. 細胞および生物における放射線に対する適応応答

(7)UNSCEAR 1996 Report to the General Assembly, with Annexes, “Sources and Effects of Ionizing Radiation”
 「放射線の線源と影響」原子放射線の影響に関する国連科学委員会の1996年報告書 
付属書
 環境における放射線影響

(8)UNSCEAR 2000 Report to the General Assembly, with Annexes, “Sources and Effects of Ionizing Radiation”
 「放射線の線源と影響」原子放射線の影響に関する国連科学委員会の2000年報告書 
付属書

  1. 線量評価手法
  2. 自然放射線源からの被ばく
  3. 人工放射線源による公衆の被ばく
  4. 医療被ばく
  5. 職業放射線被ばく
  6. DNA修復と突然変異生成
  7. 低線量放射線の生物学的影響
  8. 放射線と他の因子の複合影響
  9. 放射線誘発がんの疫学的評価
  10. チェルノブイリ事故の被ばくと影響

(9)UNSCEAR 2001 Report to the General Assembly, with Annexes, “Hereditary Effects of Radiation”
 「放射線の継世代的影響」原子放射線の影響に関する国連科学委員会の2001年報告書
付属書
 放射線の継世代的影響


参考資料 5

経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)関連資料

1.経済協力開発機構/原子力機関の組織と活動
(1)OECD/NEAの組織図は、次のとおりである。

 放射線防護・公衆衛生委員会(Committee on Radiation Protection and Public Health、 CRPPH)の詳細について(2)及び(3)に示す。

(2) 放射線防護・公衆衛生委員会(Committee on Radiation Protection and Public Health、 CRPPH)

 CRPPHは、OECD/NEAに設けられている7つの常設委員会の1つで、以下の任務の下で活動を行っている。
@ 放射線防護・公衆衛生に関する情報交換及び経験の移行の場を提供する。
A ICRP勧告、その他の国際基準の解釈や実行に関する共通の理解や指針を探る。
B 放射線防護分野の最新の知見を科学技術的なレベルでレビューし、国際的な合意を必要とする場合には助言や参考文書を作成する。
C 放射線防護体系をより単純かつ透明にするための概念や施策を進める。
D 放射線防護や放射線関連問題に関して国際的な協調活動を促進させる。
 また、これらの任務を実行するために、CRPPHはNEAやOECD内の他の委員会やIAEA等の国際機関と協調して仕事を進めている。
 CRPPHは、具体的な個別の課題を検討するために、次項(3)に述べるような、作業パーティーや専門家グループを設置し、検討結果を報告書にまとめ刊行している。
 この他に、ビューロー(議長及び4名の副議長)と事務局が主体となって行う活動があり、大学での放射線防護教育に関するアンケート調査などの放射線防護に関する加盟国の様々な状況の調査や、環境放射線防護NEAフォーラム等のシンポジウムやワークショップの開催などが行われている。CRPPHは、加盟国の経験や情報の交換、共通の課題の検討を行い報告書にまとめることを主な活動としている。それらの報告書は特に拘束力を持つものではなく、各国はその判断により適宜国内行政に反映させることとなる。
 我が国からは、文部科学省科学技術・学術政策局原子力安全課放射線規制室長が、国の代表として出席している。

(3) 放射線防護・公衆衛生委員会(CRPPH)と作業パーティーや専門家グループの詳細
CRPPHの歴史: 

付託任務(2000年4月改正):
運営体制(ビューロー):

専門家グループと作業パーティー:
@職業被ばく情報システム(Information Systems on Occupational Exposure, ISOE)
A原子力緊急時事項作業パーティー(Working Party on Nuclear Emergency Matters, INEX)
B放射線防護体系専門家グループ(Expert Group on the Evolution of the System of Radiation Protection, EGRP)
Cステークホルダー関与検討専門家グループ(Expert Group on the Process of Stakeholder Involvement in Radiation Protection Decision Making, EGPSI)
D液体廃棄物放出オプション専門家グループ(Expert Group on the Implications of Effluent Release Options, EGRO)
EICRP勧告の意味合い検討専門家グループ(Expert Group on the Implications of ICRP Recommendations for a System of Radiological Protection, EGIR)
これらの作業パーティー及び専門家グループの活動内容は以下の通りである。

1) 職業被ばく情報システム(ISOE)
 目的:

 組織、現状:
 その他の活動:

2) 原子力緊急時事項作業パーティー(INEX)
 国際原子力緊急時訓練INEXシリーズ

3) 放射線防護体系専門家グループ(EGRP)
 目的:

 これまでの活動:
 今後の活動:
4) ステークホルダー関与専門家グループ(EGPSI)
 目的:
 これまでの活動:
 今後の活動:
5) 液体廃棄物放出オプション専門家グループ(EGRO)
 これまでの活動:
 今後の活動:
6) ICRP勧告の意味合い検討専門家グループ(EGIR)

 2002年3月に設置された。
 主な活動:

2.CRPPHによる出版物

過去約10年間(1990〜2002年)に公刊された報告書及び会議報文集等の出版物の一覧を示す。タイトルには簡略な和訳を附した。



放射線障害防止基本専門部会名簿

原子力安全委員会 担当委員
松原 純子委員長代理
須田 信英委員
専門委員
大野 和子愛知医科大学附属病院放射線科講師
大森 佐與子大妻女子大学社会情報学部教授
緒方 裕光国立保健医療科学院研究情報センター情報評価室長
鎌田 七男(財)広島原爆被爆者援護事業団理事長
河田 東海夫核燃料サイクル開発機構経営企画本部企画部研究主席
草間 朋子大分県立看護科学大学学長
古賀 佑彦藤田保健衛生大学医学部名誉教授
小佐古 敏荘東京大学原子力研究総合センター助教授
小西 恵美子長野県看護大学教授
部会長柴田 コ思高エネルギー加速器研究機構放射線科学センター長
多田 順一郎放射光利用研究促進機構
(財)高輝度光科学研究センター安全管理室長
巽 紘一独立行政法人放射線医学総合研究所放射線安全研究センター
遺伝子発現ネットワーク研究グループリーダ
部会長代理中澤 正治東京大学大学院工学系研究科教授
丹羽 太貫京都大学放射線生物研究センター長
沼宮内 弼雄(財)放射線計測協会相談役
村松 康行独立行政法人放射線医学総合研究所放射線安全研究センター
比較環境影響研究グループリーダ
南 賢太郎(財)高度情報科学技術研究機構参与
山口 恭弘日本原子力研究所保健物理部外部被ばく防護研究室長
米澤 司郎大阪府立大学先端科学研究所教授

開催日
第4回 平成13年8月31日
第5回 平成13年9月27日
第6回 平成13年10月24日
第7回 平成13年11月16日
第8回 平成14年1月25日
第9回 平成14年2月 5日
第10回 平成14年3月22日
第11回 平成14年4月22日
第12回 平成14年6月12日
第13回 平成14年7月11日


放射線防護基礎調査分科会名簿

専門委員
大野 和子愛知医科大学附属病院放射線科講師
主査代理河田 東海夫核燃料サイクル開発機構経営企画本部企画部研究主席
川瀬 弘二(財)放射線影響協会放射線疫学調査センター部長
主査小佐古 敏荘東京大学原子力研究総合センター助教授
柴田 コ思高エネルギー加速器研究機構放射線科学センター長
杉浦 紳之東京大学原子力研究総合センター助手
多田 順一郎放射光利用研究促進機構(財)
高輝度光科学研究センター安全管理室長
土居 雅広独立法人放射線医学総合研究所放射線安全研究センター
比較環境影響研究グループ第3チームリーダ
沼宮内 弼雄(財)放射線計測協会相談役
山川 英昭日本原子力発電(株)発電管理室副部長
放射線管理グループマネージャ
山口 恭弘日本原子力研究所保健物理部外部被ばく防護研究室長
協力者
浅野 智宏核燃料サイクル開発機構放射線安全部放射線管理第二課長
佐藤 秀冶(財)原子力安全研究協会企画研究部部長
清水 勇日本原子力研究所保健物理部線量管理課課長代理
白木 洋也東京電力(株)原子力技術部計画グループ
中村 又司日本原子力発電(株)発電管理室放射線管理グループ
森山 竜也日本原燃(株)安全技術室放射線管理グループ副長
薮田 肇日本原子力研究所保健物理部施設放射線管理第1課長

開催日
第1回 平成13年9月11日
第2回 平成13年10月3日
第3回 平成13年11月7日
第4回 平成13年12月12日
第5回 平成14年1月18日
第6回 平成14年1月29日
第7回 平成14年2月27日
第8回 平成14年3月20日
第9回 平成14年5月10日
第10回 平成14年5月23日
第11回 平成14年6月11日


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